灰の森通信

二三川練の感想ブログ

作品

短歌連作「頬」

頬 二三川練 教室を落ちる夕陽にてらされて骨の身体をあばかれている 足跡をなぞっていけばずれてゆく水平線が身体に充ちる そうやってきみはなんにん殺したの 詩人が孤児を見つめるように 聞こえないようにつぶやく欲望のあなたの自我に蜘蛛の巣を張る 木々…

短歌連作「あなた」

あなた 二三川練 ビル群でころがりながらおちてゆく月にわたしの落書きがある 人間っていいなをうたう人間の親子がくぐる石の鳥居を 泣きながらバットを振って走りさるあなたの脚に向日葵の痣 自惚れのまぶしい木々を描いてゆく絵描きの指は油にぬれて 喘息…

川柳連作「Welcome to HopE hiLL」

父さんが監視カメラを避けている 辞めたまま働いている盆踊り 肉汁のあふれることもないピカドン 現場から生中継で腹上死 生まれなきゃよかった子ども pon de microphone 黙祷の隙にいただくアジフライ ワンピースのネタバレ↓↓↓↓↓ 黒ひげは味方

【川柳】8月の川柳

【未発表句】 AIの家族ごっこに水をやる 経歴の首から下がモアイとは いい意味で器物損壊罪でした 秋めいてパジャマどころかプラモデル 生き証人と死の商人の既読無視 懐の深いレイプになるだろう 以下既発表句 【川柳スパイラル】(未発表句あり) 銃弾に当…

【川柳】7月の未発表句

星降って誰も持たざる誕生日 中八も仲村渠も水没す 歯みがきが踏切に来てくぐりぬける 化粧水に便宜をはかるレオニダス 反対にスパゲッティを泡立てる パトカーにわたしを乗せて狙撃する 教室は珊瑚とともに引っ越して 脳味噌はひし形だから助けない 棄てら…

【川柳】6月の余り

天命がビスコのように増えてゆく かき氷のアルゴリズムを書きすすめ 曇天に柩の浮かぶ反措定 破局するお米一粒一粒と 飽き足らず拳をふるうピーナッツ 死体からはじまる石の遊園地 ツタンカーメン冷えピタ貼ったげる 感謝 焼け落ちて鳥のかたちの人である 夕…

歌壇賞2021応募連作

血 二三川練 人の血と蚊の血混ざりて手のひらは風穴のごと濡れていたるを 射殺せよか細き鹿を嬲る手と嫐らるる手のやわらかき肉 此の世の樹わが足跡(そくせき)に生えたれば麒麟はにがき林檎を齧る 無防備な頸をさらせり缶ジュース最後の一滴まで飲みほして …

【川柳作品】連作「ペンギン家族」

ペンギン家族 弊社よりアベンジャーズを送ります 敗訴なら敗訴で投げる石はある ゴンドラを外した観覧車 照れる サンダルを履いて氷漬けのライオン エルフ一人の同窓会を 戦争を撫でると猫の声で鳴く 轢かれたるイルカの頭だけ歩道 太平洋を縛る荒縄 肺癌を…