灰の森通信

二三川練の感想ブログ

【一句評】暗がりに連れていったら泣く日本/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂)

暗がりに連れていったら泣く日本/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂

 

 シンプルなユーモア川柳と言えるだろう。ここでの「日本」は子どものように幼く、心細い。当然時事句でもある。面白いのは、この句の主体が「日本」を「連れていった」ことである。本来は国=政治の動きに国民が連れて行かれるという構造がここでは逆転し、主体が「日本」という国を先導する存在となっている。
 時事句、というより日本という国への評価としてこの句を読み解くと実に批評的である。「暗がりに連れていったら泣く」ということは、普段は陽の当たる場所にいるのだろう。さらに、そこでは少なくとも泣いていない。日本のことだからなんなら威張っているのかもしれない。だが、ひとたび「暗がり」に連れて行ってしまえば日本は泣き出す。表では強気なようでも、その背後には不安、脆弱さを抱えているのだ。もはや先進国とは言えなくなってしまったこの国の、それでも自身が先進国だと信じようとする姿を端的に言い表しているようだ。しかし、遺憾ながら泣きを見るのは小市民やマイノリティばかりである。いずれは、陽の当たる場所にいる者たちにも泣きを見せたいものだ。