灰の森通信

二三川練の感想ブログ

2023-01-01から1年間の記事一覧

寺山修司というREGGAE~短歌HIPHOP説に対抗して~

「短歌はラップと似ている」といった話を聞くたびになんとなく面白くない気持ちになる。二者の共通点として挙げられる韻や即興性のような要素は何もHIPHOPに限ったものではなく、「なんだ、それならREGGAEも同じじゃないか」と、HIPHOPよりもREGGAEに熱中し…

寺山修司はなぜ川柳を書かなかったのか――寺山文学が後世に遺した全体文学の課題

※本稿は「えこし通信」27号(2023年 えこし会)に寄稿した原稿です。 寺山修司はなぜ川柳を書かなかったのか――寺山文学が後世に遺した全体文学の課題 二三川練 全体文学に向けての試論 寺山修司(一九三五―一九八三)が短歌や現代詩、演劇や映画など様々なジ…

短歌連作「頬」

頬 二三川練 教室を落ちる夕陽にてらされて骨の身体をあばかれている 足跡をなぞっていけばずれてゆく水平線が身体に充ちる そうやってきみはなんにん殺したの 詩人が孤児を見つめるように 聞こえないようにつぶやく欲望のあなたの自我に蜘蛛の巣を張る 木々…

短歌連作「あなた」

あなた 二三川練 ビル群でころがりながらおちてゆく月にわたしの落書きがある 人間っていいなをうたう人間の親子がくぐる石の鳥居を 泣きながらバットを振って走りさるあなたの脚に向日葵の痣 自惚れのまぶしい木々を描いてゆく絵描きの指は油にぬれて 喘息…