2022-01-01から1年間の記事一覧
父さんが監視カメラを避けている 辞めたまま働いている盆踊り 肉汁のあふれることもないピカドン 現場から生中継で腹上死 生まれなきゃよかった子ども pon de microphone 黙祷の隙にいただくアジフライ ワンピースのネタバレ↓↓↓↓↓ 黒ひげは味方
【未発表句】 AIの家族ごっこに水をやる 経歴の首から下がモアイとは いい意味で器物損壊罪でした 秋めいてパジャマどころかプラモデル 生き証人と死の商人の既読無視 懐の深いレイプになるだろう 以下既発表句 【川柳スパイラル】(未発表句あり) 銃弾に当…
星降って誰も持たざる誕生日 中八も仲村渠も水没す 歯みがきが踏切に来てくぐりぬける 化粧水に便宜をはかるレオニダス 反対にスパゲッティを泡立てる パトカーにわたしを乗せて狙撃する 教室は珊瑚とともに引っ越して 脳味噌はひし形だから助けない 棄てら…
天命がビスコのように増えてゆく かき氷のアルゴリズムを書きすすめ 曇天に柩の浮かぶ反措定 破局するお米一粒一粒と 飽き足らず拳をふるうピーナッツ 死体からはじまる石の遊園地 ツタンカーメン冷えピタ貼ったげる 感謝 焼け落ちて鳥のかたちの人である 夕…
※この評論は文学フリマ東京2022春(2022年5月29日)で配布された「月報こんとん」文フリ特別号に掲載したものです。加筆修正などは行っておりませんが、ブログ記事にするにあたり傍点の表記やレイアウトなどを調整しております。 寺山修司はなぜ川柳を書かな…
血 二三川練 人の血と蚊の血混ざりて手のひらは風穴のごと濡れていたるを 射殺せよか細き鹿を嬲る手と嫐らるる手のやわらかき肉 此の世の樹わが足跡(そくせき)に生えたれば麒麟はにがき林檎を齧る 無防備な頸をさらせり缶ジュース最後の一滴まで飲みほして …
あるだけのタオルを積んで夜の底/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) 積めば積むほどタオルは上へ昇ってゆく。しかし到達点は上ではなく「底」である。「夜の底」は底知れない夜の闇を表現する言葉であり、この句では情景描写と言…
練り菓子へ無政府主義がなつかしい/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) 「練り菓子」という甘くて安い物に「無政府主義」という硬質な物を取り合わせるのが面白い。また、この政治的な言葉に対して「なつかしい」という肯定も否定…
遮断機の手前は暑い秋でした/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) 遮断機や踏切は短歌でも境界の象徴として見ることの多いアイテムだ。たいてい境界が出てくる際はその手前と奥、つまりは「こちら側」と「あちら側」の対比が描かれ…
暗がりに連れていったら泣く日本/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) シンプルなユーモア川柳と言えるだろう。ここでの「日本」は子どものように幼く、心細い。当然時事句でもある。面白いのは、この句の主体が「日本」を「連れて…
勝ち負けでいうなら月は赤いはず/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) 「勝ち負けでいうなら」と言っておきながら「勝ち」でも「負け」でもなく「赤いはず」という結論が出ている。「赤い月」といえばなかにし礼に同名の小説がある…
なりゆきで寂しくなった楕円形/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) 寂しくなったのはこの楕円形だけだろうか。それとも、全ての楕円形は実は寂しかったのだろうか。僕は後者の読みを選びたい。言われてみれば楕円形とはどこか寂し…
前の世は鹿のにおいがしたという/樋口由紀子『めるくまーる』(二〇一八年十一月 ふらんす堂) 前世の話をする際、「前世の私は◯◯だった」という自身の状況について話すことは多いだろう。しかしこの句では「鹿のにおいがした」という全盛の「私」がいた世…
スタジオの裏で飼ってた猫が嚙む何の肉でもないような肉/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「Twin Reverb」より。句切れは「嚙む/何の」の一箇所に薄く。連作名はギターアンプの名前らしく、「スタジオ」とはバンドの練…
鍋底の殻の割れ目のびゅるびゅると溢れる白身 生きていたこと/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「天才じゃなくても好き」より。句切れは全角スペースの一箇所。 ゆで卵を作る際、鍋に入れた卵の殻が割れ、白身が「びゅ…
吐瀉物でひかるくちびるいつの日かわたしを産んで まだ死なないで/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「Splitting of the Breast」より。このタイトルは心理学用語で「乳房の分裂」を意味するようだ。赤ん坊が自分を満足…
水槽の匂いの駅に気づくときわたしまみれのわたしのまわり/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「八月三十二日」より。夏休みの幻の続きを表すかのような連作タイトルである。この一首は細かい修辞が特徴的であり目を引い…
死後の町に回り続ける観覧車、音がなくなってたくさん笑う/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「ハローワールド」より。句切れは読点の一箇所。読点の句切れは上の句と下の句を切りながらも散文的な繋がりを保持しようと…
目覚めれば羽虫のような愛しさを閉じ込めたまま止めるアラーム/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「夏が終わったら起こしてね」より。はっきりとした句切れは見えず、それゆえに主客の転倒や主語の混濁が見られる。それ…
生まれ変わったら台風になりたいねってそれからは溶ける氷をみてた/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「夏が終わったら起こしてね」より。句切れは「なりたいねって/それからは」の一箇所。具象の薄い一首であるが不思…
汚物入れに群がっている蠅蠅よ聞いてわたしも人が好きだよ/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「そのみずうみに浮かぶものたち」より。解説で東直子が書いているように「人々」のように「蠅蠅」と呼びかけている点が面白…
手のひらに潰せなかった蚊の脚が揺れて、揺れ続けて、夏果てる/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「そのみずうみに浮かぶものたち」より。読点がそのまま句切れとなるが、一つ目の読点は軽く二つ目の読点が深い句切れと…
ふくらかな向日葵のくき手折りつつきみが子どもを産む日をおもう/藤宮若菜『まばたきで消えてゆく』(書肆侃侃房 二〇二一年六月) 連作「そのみずうみに浮かぶものたち」より。この歌集は全体を通して女性として生きる「わたし」から女性として生きる「き…